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いま、この時代に8000円の雑誌を作る理由 新潮社『工芸青花』編集長 菅野 康晴 氏

——いつ頃からそう思い始めたのでしょうか?

とんぼの本と異なるやり方、仕組みを真剣に考え始めたのは、3、4年前からでしょうか。ヒントにしたのは器などの手工芸作家のあり方でした。本は例えば1万部刷ったとしても、そのどれもが同じという前提の商品です。ですからその本を買った読者は、1万分の1の商品を手にしたことになります。それに対して手仕事の器はどれも世にひとつしかないもの、1分の1の商品です。買い手にとってどちらが嬉しいかといえば、おそらく1分の1のほう。それなら本も、そういう商品になればよいのではないかと思ったのです。『工芸青花』がそうした本かどうかは読者の方に訊かないとわかりませんが、限定版で、シリアルナンバーを1冊ずつ手で捺していることや、麻布張りの布目も1冊ごとに違うし、箔捺しの文様もかすれたりはみだしたり、ひとつずつ異なっています。また販売・流通も新たに試みたことでした。営業部や宣伝部とは関わりを持たず、新刊の告知、受注、決済、発送作業など、みな自分たちでやっています。

——どのように具体的な形を決めていったのでしょうか?

いろんな人に訊きにゆきました。いずれも社外の知人です。リトルプレスの編集者、古書店主、工芸店主、器作家、茶人、カフェ店主、骨董商……。

——手仕事の品を売るのと同じようなことですね。

そうですね。器作家の方々に送っていただく個展のDM、みなさん手作業で何千という数を発送しているのですが、創刊前の案内はそのやり方を手本にしました。内容見本のリーフレットを作り、知人その他、関心を持ってくれそうなところへ送ったのです。あとSNS、この時代でよかったなと思いましたね。ウェブサイトも自分たちで作りました。会社の公式サイトにはリンクを載せています。

——本や雑誌は、まったく同じものとして大量に流通し、発展してきた側面もあります。

でもその前は写本でした。内容は同じでも、手書きだから1冊ごとに別の本になります。あとは例えば柳宗悦が戦前戦後の約20年間出し続けた月刊誌『工藝』の部数は1000から1500部、後半は表紙が手描きの漆絵だったので、まさに「1分の1」の雑誌でした。

——『工芸青花』の中身を見ると、大きな特集を持つではなく、7〜9のテーマを並列にしています。

何人かに「大特集スタイルのほうが保存版になりやすいよ」といわれました。そうかも知れません。12月末に出す4号では、奈良時代の礎石の記事と中世ヨーロッパの教会美術の記事をほぼ同じページ数(30数ページ)で掲載しています。どちらかにしか関心がなかった人が、「こっちも面白い」と思ってくれたら嬉しいです。雑誌のよさはそういうことだと思うので。

——『工芸青花』の仕事では、催事が大きな存在のようですが、今後、編集者の仕事として、外に出て実際に読者に会う、イベントを企画するといったことが必要だと思いますか?

そうすべきとは思いませんが、やってみると案外、本の編集とかなり近い気がしています。昨年新潮社は古い倉庫を改修して「la kagu (ラカグ)」という商業施設(服、雑貨などの売場とカフェ、イベントスペースも)を作りましたが、本も小さな売場の割によく売れているようです。青花でも、イベントは本を売る機会、知ってもらう機会でもあると思って続けています。



『工芸青花』

http://www.kogei-seika.jp/

布張りに箔捺しの豪華な造本で、年3回発行される。定期購読は年会費2万円(税込)、1冊では8000円(税抜)。他の編集部の建物とは離れた郵便物の作業所の隣にある編集部で、菅野編集長とアルバイトの2人体制でつくられている。発送リストやラベルづくり、発送作業、webサイトづくりも自分たちで行う。サイト上のショップでは、在庫があれば『工芸青花』を購入できる他、美術や工芸の講座、茶会や演奏会など催事の申し込み等もできて、雑誌という枠を超えた、文化の発信・交流拠点にもなっている。




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