理事長挨拶
インターネットやSNSの普及により、誰もがマスに向けての情報発信ができるようになったことに加え、昨今は生成AIの普及により、コンテンツの作成自体も容易になり、表現のためのスキルやコストの垣根が下がってきています。
いわゆる情報発信の民主化という良い面もある一方で、恣意性が強い玉石混淆な情報が溢れるようになりました。また、受け手は自分の嗜好に合った情報だけを受け入れるように促され、社会の分断が進んでしまうという負の面も生じてしまいました。
そうした時代だからこそ、情報を受け取る側のリテラシーが必須であることは間違いありません。そして、そのリテラシーを育てるためにも、出版・情報という業界に属している我々は、できる限り「複眼的な視点」を大切にし、正確な情報を届ける力が求められているのだと思います。いわばプロの編集者として。
そのためには、主体的な批判力・判断力が必須ですが、生成AIにはそれがありません。だからこそ、出版・情報メディアに関わる編集プロダクションやライターさん、イラストレーターさん、デザイナーさんたちの批判力・判断力に裏打ちされた表現力や、その表現をさらにブラッシュアップしていく編集者の力がより重要になっている時代だとも言えます。
とはいえ、個人や個々の組織でできることは限られています。極端な例ですが、ホモサピエンスがネアンデルタール人より栄えた理由の一つが集団の大きさの違いにあるとか。ホモサピエンスは集団が大きかったゆえに石器などの進化が早かったと言われています。
これだけ変化の激しい時代、我々も緩やかに集団を作り、情報や知恵を緩やかに共有し合い、緩やかに協働しながら時代に合わせて進化と深化をしていくべきだと思います。AJECの役割の一つはそこにあるはず。
1983年4月28日のAJEC設立以来40年以上の月日は流れましたが、出版・情報業界の発展のためにAJECは業界のハブとしての役割をめざしてこれからも活動をしていきたいと考えています。
一般社団法人 日本編集制作協会
理事長 塩川政春(株式会社カルチャー・プロ)