略歴の紹介がありました。その他に、幼児の才能を見つけてどう伸ばすかという幼稚園、モンテッソーリ「こどもの家」にも関わっており、時間があれば、幼児教育の話にも触れます。幼児教育が人生で最もコストパフォーマンス高いことが分かったのです。
大学は授業料が高いです。高い割には効果の程は微妙です。むしろ、幼児教育をしっかりやっておくと、投資効果が違う、という研究が米で発表されました。40年位かかって研究されたようです。優れた幼児教育を受けた子はそうでない子に比べて大人になってから、大学進学率、年収、犯罪率が違う、ということが長い研究で発表されています。今日はその話をする時間はありませんので、別の機会があれば……。
70年代から80年代、芸能雑誌が売れた時代でした。今日はこの時代の例を中心に致します。次に90年代後半~2000年「会社組織の改革」。これは私が40半ばくらいの時、学研が潰れそうになった頃です。この改革の話は重いです。経営企画部の担当となり、地獄の組織改革三年間を経験。それからその後なんとかV 字回復を果たしました。現在学研は絶好調です。また別の機会があればお話しさせていただきます。
さて、本日の本題です。創造力に必要なものとは?
皆さんにお尋ねします。編集者の命、創造力に関係あるワークショップをやってみたいと思います。今年に入ってあなたが一番面白かったこと、感動したこと、うれしかったこと、腹が立ったこと、興味を持ったことは、何ですか? 隣の人と2人一組で話し合ってみましょう。 何でもいいんです。自分が感動したこと、これは 創造力の原点になります。
(受講生に5分間考える時間が与えられて、二人ペアでそれぞれ話し合い、3人にインタビューし発表しました)
内容はなんでもいい。自分の心に正直でよいのです。自分が強く感じていること、夢中になっていること=これが創造力の原点、エネルギー源です。
人間は生まれながらに持っている才能がある
人は生まれながらにして固有の才能を持っている。石ころに興味、虫に興味、鉄道に興味、ままごとに興味、それぞれみんな違うんです。
赤ちゃんは、誰も教えないのに、寝返る、ハイハイする、立ち上がる、立てれば歩こうとする。幼児期になると大人の真似をしたり、ブーブー来たなど2語を話し、いつの間にか言葉を話します。文法なんか教えてないのに自然にできる。歩くことも、右足出して左足出してと教えてないのにです。いつのまにか走るようになります。これってすごい才能だと思いませんか。
少年期を見てみましょう。将棋の藤井聡太くんは14歳ころ4段とって大人を負かしている。囲碁の仲邑菫さんは10歳でプロ入り。韓国で囲碁の名人と対戦している。藤井くんは幼稚園の時、モンテッソーリに行っていたそうです。そこで思う存分やらせる環境を作ってあげたそうです。その中で最初は詰将棋とか、簡単なものから、はまったようですね。
5歳児くらいの時、一番、その人のもって生まれた興味関心が正直に出る頃、といわれています。その頃にうまくそれを見つけて伸ばして育ててあげると、すごい人になっていくんですねえ。
青年期をみます。GAFA(ガーファ)/グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、アップルのスティブ・ジョブス以外はみなモンテッソーリ教育を受けていることを発見しました。彼らの発想力は、幼児の頃から変わっていない、ずっと好きなことをやっていたんですね。最近になって、若い能力を買おう、ということで、羽のない扇風機、ダイソンですね、企画者はほとんど20代です。大学を作って、お金をあげて大学生を育てようとしているらしい。ダイソンが大学生にお金をあげていろんなアイデアや企画を考えさせる、それを実際にモノにしていく、大人やベテランでは考えられない発想、羽のない扇風機などです。若者の創造力を見つけて育てて開発しようとしています。すごいことです。
面白いことに夢中になること。基本は「遊び」じゃないでしょうか。
これが創造力・想像力の源ではないかなと思います。
1、私の編集者時代の創造力の事例から
●最初の配属は「高2コース」
最初の編集部:高校雑誌編集部「高2コース」に配属されました。担当は、「当選者発表」と「読者のお便り」。地味な、面白くないページでした。感動したことは3つありました。1つめは、「編集後記」の原稿で14字×6行の記名原稿を書けたことでした。
2つめは、雑誌が出来上がってきたうれしさ。
3つめは、編集後記で、お手紙ください、と書いたら、読者が本当にハガキをくれたこと。
創造力を発揮する場面は、ほとんどありませんでした。雑誌で「リード」と言われる(20字×5行)ものがあります。一日中、ダメ出しを食らって、スパルタ方式で、泣いた覚えがあります。でもありがたいことに編集者としての文字を書く基礎基本を強制的に学べました。
●次は、出来立てのBOMB!編集部。生き残り大転換のタイミング
突然BOMB!編集部への異動になりました。学研では「コース」が王道ですので、皆から、がっかりするなと言われましたが私にとっては面白かった編集長は兼務で忙しい。あとは私と外注さんだけという最弱の編集部。
創る喜びはここから始まりました。たいへんと思えばそうですが、新米の私が企画、取材、編集、果ては部数決定にまで関与できるんです。これは面白かったです。
徹夜もまた楽しからずや。徹夜というより寝泊りしていました。疲れは残らず、自由度が高く、寝泊りも苦にならず、自由でわいわいガヤガヤやっていました。取材対象の芸能界ですが、すべてが新鮮でした。20代後半まだまだ若かった。
ボムは、当時、読者投稿の雑誌でしたが、売れなくて、廃刊間際でした。そこで、BOMB!の生き残り大転換をはかります。読者投稿雑誌からタレントの生い立ちの特集主義に転換。最初の特集は武田鉄矢さん。昔は海援隊というグループでしたが、人気が出てきた頃です。そこからから軌道に乗り始めました。
●2万部切ったら廃刊だ!
BOMB!編集部へ異動直後に、社長から2万部を切ったら廃刊だ、と通告を受けていました。ピンチでした。
海援隊・武田鉄矢特集号を企画したものの、直接の取材はだめでした。起死回生の絶体絶命企画でしたから、実家の博多に行き、実家の取材。かあちゃんから取材しました。母子手帳の体重とか、小さい頃の貴重なアルバム、通知表、健康手帳、赤ちゃんの写真や小中校のアルバム、生い立ちを特集しました。またコンサート会場の武道館で手売りもしました。この企画が当たり2万部越えで、廃刊の危機を脱出しました。
その後は、水谷豊、さだまさし、山口百恵、石川ひとみ、榊原郁恵、柏原芳恵、河合奈保子、三原順子、そうしたタレントを特集していきました。当時、芸能誌御三家、『明星』『平凡』『近代』この3誌が芸能界を牛耳っていた。学研は、取材をさせてもらえなかったんです。なんで学研がアイドルを取材するんだ、と言われて苦労しました。
でも今から思えば、面白かったですね。全部、電話じゃ、けんもほろろですから、直接会いに行っての交渉でしたから。
●まったく新規の創造力⇒アイドルフォトパックで起死回生
新企画「アイドルフォトパック」を思いつきました。ヒントは読者投稿の中にありました。さらに、
当時、流行ってたカセットテープのケースとDPE(写真現像、小西六製)にもヒントがありました。
その頃、生写真ブームがファンの間であり、カメラマンが撮ったものではなく、素人が撮った写真が物々交換されてました……。それまでは、ブロマイド屋さんのような写真が主流でした。
アイドル生写真+ミニBOMB! 生写真+生直筆手紙 生写真+生直筆手紙に+香り付きなど。「なま」がポイントでした。
デザインは化粧品会社(資生堂)のデザイナー。こんな商品は店頭に置いてくれない。玩具屋さん、本屋さん、文房具屋、カメラ現像店いろいろ行きました。救いの手は、取次の教材を扱う部署。学研の上の人たちも売れると思ってなかった。ところが爆発的に売れました。それは、アイデアと仕掛けと販売研究が実ったからでした。結果3巻セットで4回シリーズ系12巻発売。めちゃ売れしたので社長賞をとったりしました。
今日、中森明菜巻の現物をお持ちしています。
●さらに、雑誌の企画から映画を作った
BOMB!(ボム)の中に「パンツの穴」という読者投稿ページがあるんです。名前からしてへんな名前ですが、自分の青春時代を2ミリから13センチの文学、と言っていました。うれしかった、楽しかった、恥ずかしい思い出を書く、そういうページです。よく修学旅行の時、裸の体に落書きされた、とか、女風呂を覗いた、とか、他愛もない話だけど、当時の子どもたちにはとても面白い、そういうのが詰まっている投稿です。森鴎外の「ヰタ・セクスアリス」とか、五木博之の「青春の門」とか、みたいな文学です、みたいなことを企画会議にかけるときそんな言い方をしていました。うまく老人たちを説得したんですね。
しかし、「うちは教科書を出している会社だ、何考えているんだ、何がパンツの穴、だ」と、否決されましたが、外部のビデオの会社が5千万出してくれて、映画化が実現しました。その時にオーディションで出会ったのが、菊池桃子さんです。雑誌から映画、映画の主役ヒロインから菊池桃子と出会ったことで、雑誌「Momoco」が生まれた。これは宣伝なしで、初回24万部完売したのです。
Momocoが、いきなりの大ヒットですね。幸運に恵まれました。うまく行く時はどんどん発展していく発想創造力、企画力。ボム、Momoco、そういう雑誌から派生していった創造力の連鎖ということです。
●またもや突然の異動! 学習と科学へ!
ある日突然、「学習と科学」編集部への異動が命じられました。部数の落ち込みがとまらないということで、新しい発想が求められた。100万部目指すための目標ということで、企画チーフを命ぜられ、新聞広告やテレビCMも担当しました。その頃に科学の編集部にあった教材の「エジソンの蓄音機」が転がっていた。同期の人が実演やってくれたんです。ペコペコのポリの透明コップに針で刻みつけると、音、声が録音される。1年位前に開発して、ほったらかしだった。この実演を見て、これは売れると思った。名づけたのが、「大人の科学」。
あるスポーツ紙の見出しに「学研、おとなのおもちゃ発売!」と書かれて、社内の上司から怒御咎め。「よく見てください。科学教材です、と書いてくれていますよね」。
はじめは、書籍なの? 文具なの? おもちゃなの? ども扱ってくれないんですね。流通がない、売り場がない。営業の人と、当時のトップスーパー、イトーヨーカ堂に売り込みに行きました。おもしろいから置いてみよう、となった。でも置く場所がないんです。ゴルフ用品売り場なの?おもちゃなの? 書籍なの? 文具なの? と。結局、落ち着いたのは、文具と書店さんの間に置くことになり、そこに集約。あとは、東急ハンズ、トイザラス、とかそういうところにルートをどんどん開発して、これも爆発的に売れました。「大人」ブームのはしりですね。創造力が実現化した話です。
●芸能界アイドルは「千三つ」
大人の科学の仕掛けでは、朝日新聞にぬかせる、とかやりましたけど、思いつきが形になって広がっていった、おもしろかったですね。芸能界アイドルは千三つ、千人に三人しか残らないという世界で、毎年タレントをデビューさせました。菊地桃子、西村知美、酒井法子、畠田理恵、そういったタレント、どんどん出しました。売れる法則を見つけました。まずは自分なりに売れると思うかわいい子ですね。「直観」です。美人だから売れるわけではない。売れるアイドルという顔があるんですね、その感覚が、大切。次に「仕掛け」ですね。ボムの特集と同時に、レコード、CDをリリースする。映画に抜擢する。テレビのドラマに入れるなど、仕掛けをしっかりやりました。次に今でいう「マーケティング」=「読者はがきの調査結果」、そこから一人のタレントに絞り込んで巻頭特集に決める、という法則めいたことをやりました。最後は、決めたら、思い切って、えいや、という「強い意志」ですね。
新商品の法則としては、新たな市場を作る、ということですね。今までなかったような市場、そこに「アイドルフォトパック」にしても、「大人の科学」にしても、売り場がないんですね。そういったところに新しい商品を、新市場に、という一番おいしいところです。でもハイリスクハイリターンですね。あたるとでかい、そういったところが醍醐味ですが。
●トライアングルアメーバ組織
これは、法則というか、私が編集長の時のやり方というか、トライアングルアメーバ組織といって、1人の編集長がスタッフの才能を全部つぶさに把握することは難しい。そこでせめて3人組となり、その組が次々とつながっていくイメージ。3人組織体制の集合体みたいな。それをトライアングルアメーバ組織といってやっていました。つねにどこへでも行けてすぐに企画にできる阿吽の呼吸のチームつくり、そうした小さな組織体をくっつけるという形を作りました。
2.創造力の伸ばし方とは? 最適な環境、適さない環境
●創造力を伸ばす環境
まず、好奇心ですね。なによりも大事。人より濃い好奇心が必要。人に影響されない好奇心ですね。そして夢中になる。
次は、行動力ですね。やってみると好奇心が本物かどうかわかりますし、もっと深くなっていく、好奇心の中身が専門的になっていく。自分の試金石みたいなものです。
ほめる。認める。正当に評価する。これは、立場が上の人ほど必要ですね。詳しくない人が詳しい人をほめる、認めるのが、その人のエネルギーになり、モチベーションがあがります。
恥ずかしがらない、面白がる、楽しく、喜び合う。
企画自体、こんなの出していいのか、と思ったり、恥ずかしいと思いがちですが、面白がる、楽しく、喜ぶという自由な雰囲気つくりが大事なんです。
私が編集長の時、新人が最初に手掛ける記事はその人にちなんだ、恥ずかしい企画をやらさせていました。(例示:個人名あるので割愛)
今の時代ではパワハラですよね。でもそういう恥ずかしいことをやって誌面に出すんです。演技力です。作ってさらけ出すと、その人の能力が、花開くようになる。恥ずかしがらなくなるので、どんどん意見を言うようになる、どんどん企画が出ます。自分の中の殻、鎧をとってしまうと直な自分が現れる。育ちがよいと中々とれないですが……。
自由な雰囲気の中で恥ずかしがらない。社会の常識から解放するチーム作りをする。人と違うことをやるチーム作りですね。当然、身体の自由、頭の自由を保証してあげなければならない編集会議は編集長も新人も同列という考え方。むしろ、読者に近い若い人のほうが有利である。年をとった編集長より、若い人の企画をよく取り上げました。
●逆に、創造力が発揮されない環境とは?
やる気がない、元気がない、健康を害してる、病気、精神状態悪い時。特に、人間関係が悪い場合ですね。職場、家庭内、恋人関係うまくいってない、それは職場でも表れます。企画どころではない不平不満、愚痴、いじめが出ない環境をどう作るかです。
最近気になるのは、みんな一緒、同調圧力、というのが日本に蔓延している気がする。変わったことをいうと、「なに、カッコつけて」みたいに言われる。あとは、規則でがんじがらめ、はだめ。時間的束縛もないのがよい。われわれの時代と違って、今やいずれも難しいですが……。
創造力が発揮されない環境は、こんなところです。自由でのびのびした環境でないと、アイデアは出てこないのです。
●創造力の源は、ドーパミンである
創造力を発揮している時は、脳内に、ドーパミンが出ていると言われています。いろんな研究がされていて、京都大学の森谷敏夫教授の資料から。βエンドルフィンとか、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)•脳波(α波)など出ている時は、いろんなアイデアが出ます。いわば、ストレスフリーになった状態。
そういう科学的な裏付けがあると思います。体を動かすのもよいようです。運動をすると、脳内にドーパミンとか、覚せい状態になる。覚せい剤と化学式は似ています。覚せい剤はだめですが、自分の体から出るドーパミンは、自然なんですね、アイデアが出る時は、活性していて、ストレスがない状態。ということが、脳科学の研究でわかりました。
脳科学の治験が裏付けとなっています。
3.経営・組織改革における創造力
●タスクチームでV字回復!
会社がおかしくなると、全体が鬱というか、のびのびしない環境が蔓延してしまう。経験してない人はわからないかもしれませんが、小さい会社も大きい会社もやばくなると、みんな暗くなる、自由に言える雰囲気がなくなる。それを変えようと、社長が強引にやると社内がおかしくなったりする。
最近で言えば、話題のカルロス・ゴーンってすごいですね。日産がつぶれそうな時、あれだけリストラし、業績を変えた。残った日産の社員のモチベーションをものすごくあげました。功績はすごいと思います。あの人がいなかったら、日産はなかったのではないでしょうか。
どうやって既存体制意識をぶちこわすか、これも想像力ですね。ある時のひらめきで、出てきました。タスクチーム方式でした。経営チームがやるとか、社長がやるとか、外部コンサルタントがやるとかいうと、一般社員はついて来ないんです。
そこでタスクチーム作りました。学研の、40部署の部長・副部長、80人のチームを作り、中のよりすぐりの40人のチームを、よりすぐりの5チームをつくり、戦略ごとにその人たちに解決策をたててもらう、というやりかた。半年やり続けて、そのタスクチームが作った会社中期経営計画を即実践していった。結果、赤字が止まり、以降、売り上げも伸びV字回復して今に至ります。
●創造力どんな資質、能力?
創造力とは、能力脳力、すべての人に備わっている才能だと思います。先ほどいった赤ちゃんの話。人間として生まれたら、すべての人が何か才能持っていますよね。
それが伸びないのはなぜでしょう? 大人が邪魔しているのではないでしょうか。親が邪魔しているんじゃないか。早くしなさいとか、ほかの人と比べたり。常にせかして怒る。それはだめです。その子なりのやり方を認めてあげないと、言われた通りしかできない子どもになってしまう。だから、すべての人に才能がある、という前提でつき合ってあげることがとても大事だと思います。
あとは、環境づくりですね。自分を取り巻くすべての事象、時空。
自分がどういう場所、環境なら、アイデアが出るかな、室内がいい、野外がいい、いろいろあるでしょう。私は、企画をまとめる時、ホテルのラウンジとか使っていましたね。会社だと電話がかかってくる。
人間関係がよくないとだめ。これはとても大事。人的環境ですね。上司、同僚、後輩、仲間。あとは、時間。朝がいい、昼がいい、夜がいい、とあるでしょう。人それぞれで、ぼくは夜中が多かったです。あとは、健康、食事、スポーツ、身体を動かす。
自分にとって快適な空間、時間、音楽など、自分にとっていい環境を作ってあげる。
好奇心、観察力、とても大事。24時間体制で、街、人、電車のつり広告、ファッション、よく見ていましたね。
あとは、習慣です。創造力遺伝子をオンにすることですね。続けなければ意味ないですから。私は3年かかりましたが、24時間、企画を考える創造力を働かせることが苦にならなくなったですね。
4.教育における創造力
●文科省の教育政策における創造力育成の大胆プラン
2020学習指導要領の歴史的改革開始。
これは明治5年、日本の教育制度が始まったんですが、幕末以来の改革です。背景には、国力の低下です。アメリカの属国化があります。
GAFA(ガーファ)というんですか、グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、その属国みたいな、これにマイクロソフトを入れたら、みなお金を吸い上げる組織をアメリカが作ってしまった。これではいかんという危機感もあり変わっていくんです。
●学校で学んだことは実社会で、役立っていますか?
学校では、知識、技能、まではやっています。
創造力、企画力、問題解決力、技術力、マーケティング、チームワーク、リーダーシップ、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、折衝力、説得力、思考力、判断力、表現力、意欲、関心、態度、体力、思いやり、道徳観――実社会で必要なものがいっぱいある中で、ほとんど、学校では、知識・技能重視、偏差値アップのために教えていたのではないでしょうか。
それではいかん、ということで、今度、変わるわけです。
日本:子どもたちの直面する社会・教育問題、明治以来150年
・急速な少子高齢化と、生産年齢、若年人口の急減、外国人労働者の増加。
・産業・労働市場の構造変化、出版業界などはとくに変わりましたよね。
・労働生産性の課題、終身雇用、年功序列――今はないですよね。
・雇用の混乱~正規・非正規雇用の分断、就活の複雑化、ここ何十年かで起こっています。
・地域経済の窮迫と地域社会の過疎化。
・社会保障費の急増と国家借金1千兆円と言われる現状。
・他国・他地域との国際関係、中国の台頭、北朝鮮、韓国、米国、EU,たいへんです。
・格差(所得格差、学歴格差、地域格差、これが世代を超えて連鎖しつつある。貧乏な家庭の子はすぐれた教育を受けられなくて、また貧乏になる、という連鎖)
・そういった社会の中で、児童虐待・いじめ、病気とかが増えているんじゃないでしょうか。
・日本の場合、就学前教育~高等教育までの公費負担と、公財政支出OECD最下位です。
・小中学生は、学力が高くランキング上位ですが、大学は世界ランク低いです。
・大学2018年問題、5割定員割れ始まる。小学校の統廃合はすさまじいです。
・世界企業ランキングでは、日本企業が凋落しています。
世界:産業革命・独立革命以来250年人類史が変わる時代
・大量廃棄・大量エネルギー消費,CO2の増加、海洋酸性化など環境問題
・自然災害の深刻化。地震、火山、台風、豪雨、豪雪、熱波
・森林、海洋、土壌、空気、水、野生生物の保全保護。
・感染症の大流行の危険性―気温が上がっていくと思いもよらないウイルスや病原菌が突然出てきて、大流行する可能性がある。長生きすることで生じる生活習慣病や認知症、精神疾患もそうです。長生きがいいと思っていたが、けっこう大変な時代になっている。
・水不足、天然資源不足、アフリカとか人口増加で困っている、食料問題の深刻化。
・政府、民主主義の機能不全。
・財政難により年金、医療、介護などの社会保険機能が低下している。
これらの背景を考えた時、子どもたちにしっかり教育をしていかなければならない、お仕着せの教育ではだめ、ということですね。
答えの見つからない課題をどのようにより良い方向へ導いていくのか。一国では解決できない問題をどのような方法手段でグローバルに解決していくのか。課題は山積です。
5.未来AI/ロボット時代に生き残るには?
●社会の仕事激変の時代
2011年にアメリカの小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業につくだろう(キャシー・デビッドソン氏:ニューヨーク市立大学教授)
10~20年後に、日本の労働人口の約49%が就いている職業において、人工知能やロボット等が代替することが可能との推計結果が出ている(2015.12.02株式会社野村総合研究所)
記憶する、計算する、翻訳する――などは機械の方が得意。創造性、協調性が必要な業務や、非定型な業務に対応できる人材等がこれから求められます
●人工知能やロボットなどによる代替可能性が高い100種の職業(50音順)
IC生産オペレーター/一般事務員/鋳物工/医療事務員/•受付係/AV/通信機器組立修理工/駅務員/NC研削盤工/NC旋盤工/会計監査係員/加工紙製造工/貸付係事務員/学校事務員/カメラ組立工/機械木工/寄宿舎/寮・マンション管理人/CADオペレーター/給食調理人/教育・研修事務員/行政事務員(国)•行政事務員(県市町村)/銀行窓口係/金属加工/金属製品検査工/金属研磨工•金属材料製造検査工•金属熱処理工•金属プレス工/クリーニング/取次店員/計器組立工/警備員/経理事務員/検収・検品係員/検針員/建設作業員/ゴム製品成形工(タイヤ成形を除く)/こん包工/サッシ工/産業廃棄物収集運搬作業員/紙器製造工/自動車組立工/自動車塗装工/出荷・発送係員/じんかい収集作業員/人事係事務員/新聞配達員/診療情報管理士/水産ねり製品製造工/スーパー店員/生産現場事務員/製パン工/製粉工
●代替可能性が低い100種の職業
アートディレクター/アウトドアインストラクター/アナウンサー/アロマセラピスト/犬訓練士/医療ソーシャルワーカー/インテリアコーディネーター/インテリアデザイナー/映画カメラマン/映画監督/エコノミスト/音楽教室講師/学芸員/学校カウンセラー/観光バスガイド/教育カウンセラー/クラシック演奏家/グラフィックデザイナー/ケアマネージャー/経営コンサルタント/芸能マネージャー/ゲームクリエーター/外科医/言語聴覚士/工業デザイナー/広告ディレクター/国際協力専門家/コピーライター/作業療法士/作詞家・作曲家/雑誌編集者/産業カウンセラー/産婦人科医/歯科医師/児童厚生員/シナリオライター/社会学研究者/社会教育主事/社会福祉施設介護職員/社会福祉施設指導員/獣医師/柔道整復師/ジュエリーデザイナー/小学校教員/商業カメラマン/小児科医/商品開発部員/助産師/心理学研究者/人類学者
編集者、デザイナー、コピーライター、残っていますね。パターンが決まっているふつうの職業は大体なくなっていくでしょう。ロボット、AI関連業種がすごいです。
そこで、今、教育の改革が迫られている
わが国と世界が大きな転換期を迎えた現在、この教育改革は、幕末から明治にかけての教育改革に匹敵する大きな改革であり、それが成就できるかどうかが、わが国の命運を左右するといっても過言ではありません。
私が今日、最後に結論づけたいのは、日本の教育の方向性は、「編集力」を向上させる方向に向いているのではないかと思うのです。
方向性は、算数・国語・理科・社会、プラス、「思考力」「判断力」「表現力」、とくに表現力は、今でいう編集者の文字の力、写真の力、映像の力が求められる時代に、そういう指導を入れていきたい、というところです。いわゆる「創造力」と「想像力」ですね。それは、編集者の必須の力、それをこれから小学校からどんどん入れていこう、ということです。
●創造力を高める2つのボタン
1つめ「自由」。時間的な自由、頭の自由、身体の自由、束縛からの自由、そういう自分にとって自由な状態をどれだけ作れるか、自分らしい時間になる時、それが「自由」。
2つめ「好奇心」。だんだん年を取ると、好奇心がなくなってくる。ときめかないとだめ。
若い方々には「自由」と「好奇心」をもとに、充実した編集生活を送ってもらいたいと思います。
“編集者ほど素敵なショーバイはない!”(了)
(平成31年1月24日(木)AJEC編集講座での講演より)