第1回編集講座-編集者のありかた 「編集力とは何か-1万人の著者と出会って」
開催日:2015年5月21日(木)
会_場:コミュニケーションプラザ ドットDNP 2階
時_間:18:30 ~ 20:00
講_師:岩波書店・前社長 山口昭男氏
受講者:80名
第10期編集講座の第1回の講師は、岩波書店・前社長である山口昭男氏を迎えました。
第10期のテーマ「しっかりした本」の本作りには、作り手である編集者の編集力が大切。
1万人強の著者と会って、数々の名著を生み出した山口氏が、その編集力の秘密を公開してくれました。
まず、編集力をつけるために基本としてきたのは、「好奇心」「想像力」「構想力」の3視点であるとのこと。そのために、山口氏は1日に二人の著者に会うことを自分に課して、それを、ほぼこなしてきたと言う。
出会った著者は、1万2000人。一日二人の著者に会って雑談をする。その中から企画になりそうなヒントを得る。また、好感をもたれるためには、その著者の専門分野以外の話をすることが秘訣とのこと。企画を立て、書き手に依頼できたら、本は八分通りできたも同じ。
出会った多くの著者から得た、実物のサインや手紙などをお見せいただきながら、お話は続く。井上ひさし先生の遅筆ぶり、それを謝る手紙の紹介、社長になったときに作家の皆さんたちからパーティーを開いて激励していただいた寄せ書きなどなど、興味深いお話が尽きず、講演時間を30分もオーバーする中身の濃いお話に。
満員に膨れ上がった受講者は、改めてトップ編集者の喜びと苦心を共有した思いであった。
そして最後に、「本に未来はあるのか」という核心に言及。結論を言えば、未来があるかないかとか、本は紙か電子かどっちかということではなく、人間にとって「考える」こととは何か、ということが大事で、そのことを基本におくことのほうが大事だ、とのこと。ただし、「編集者は、何事も鵜呑みにしてはならない。私の話も鵜呑みにしないように」とおっしゃり、講演を締めくくりました。