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東京電機大学出版局 局長 植村 八潮氏 「ガラパゴス化」が電子書籍市場をつくる

「ガラパゴス化」で市場を育てよ

では、日本では電子書籍に関してどのようなニーズがあると考えられますか?

アマゾンの発表によると、アメリカでは60代、50代が積極的にキンドルから電子書籍を購入しています。理由は、この層が金銭的にも時間的にも余裕がある世代だからです。それにアメリカは比較的知的レベルの高い人しか本を読まないんですが、日本に比べて人口の多い分、知的層も厚いんですね。
一方、当大学の調査によれば、日本で電子書籍のニーズが最も高かったのは40代の男性でした。アメリカと違って、日本の50代、60代は電子書籍を読みたいと思っていないんです。日本ではまだ、現場の最前線で新しいことにキャッチアップしていかなければならない40代が購入を希望しているということだと思います。
一方でケータイ世代といわれる10代、20代も、電子書籍に関してはまったく興味がないことがわかりました。日本の電子書籍の市場を掘り起こすには、日本ならではの読書習慣や購買層の特性から、ニーズをカタチにしていくことが求められるでしょう。
だから、出版業界がケータイ小説やケータイアプリを出版の一形態であると認めず、縦組みの活字文化だけが出版なのだとこだわってしまったら市場は育ちません。
日本で電子書籍が市場として成功するためのキーワードは「ガラパゴス化」だと思います。日本がクールジャパンとして国際的に評価されているコンテンツ、つまりコミック、ゲーム、歌舞伎などは日本市場が「ガラパゴス化」しているからこそ磨き上げられたコンテンツです。それらを新たなデバイスに合わせた形で提供していけるかどうか。市場成立の鍵はそこにある。そのためには読者のニーズを徹底して探るしか方法はないと思います。

本との出会いは増えている

電子化という変化が、我々の生きている時代で定着するのか、何世代先かで定着するのかは誰にもわからないでしょう。しかし、変化の波が止まらないことだけは確実です。そもそも産業が変化しない時代なんてないわけですから。
長いメディアの歴史を考えると、メディアの変化というのは技術と一体で、時代の必然です。
「情報」ということで考えるとラジオ、テレビの時代から、ブロードバンドに至るまで、私たちは新しい技術を生み出すことで社会を変えてきましたし、そのおかげで国民の知識レベルも底上げされました。そう考えると印刷媒体の役割のシェアが落ちるのは時代の必然です。
しかし、本の売上こそ落ちていますが、販売部数は変わらず、相変わらず読者に読まれていることのほうがすごいと思います。
21世紀になって、書籍の書店販売部数は7億冊台をずっと維持しています。一方、公共図書館の貸出は、5億5000万冊から増え続け、今では7億2000万冊です。
さらにBOOKOFFで3億冊ほど販売されています。つまり、昔と比べると本との出会いは格段に増えているわけです。平均単価の低下によって売上が減っているだけで、結局一人あたりが読んでいる本というのは減っていないということです。
今、一番読書量が多いのは団塊の世代で、定年になってもまだまだ社会的に活躍するので、とりあえずこの世代が読書人として現役でいるうちは、出版界は生き延びられるでしょう。
しかし、ほどなく、最大の購買層がいなくなるわけですから、出版界はその時のためにどうソフトランディングしようかと模索している過渡期なんだ。そう考えた方がいいと思います。
突然業界全体が大きく変わるということではなくて、毎年人口が減る程度のゆっくりとした変化が進行している。そのくらいの対応速度でも、市場のガラパゴス化は充分に可能だと思います。10年後、今の60代が70代になり、ケータイ世代である20代は30代になるから、その将来を見越した市場づくりというのが、求められているのだということです。

そういった時代に向けて、編集制作会社がしなければならないこととはなんなのでしょう?

編集者の仕事というのは、情報の整理と知識の体系化を図り、どんなプライオリティで読者に提供するかということです。それは昔も今も未来も変わらないと思います。
ただ、新たなデバイスの登場によって、これからは間違いなくハイブリッドの時代に突入するわけですから、紙とデジタルをどう融合させて企画を立てていくのかということが肝になってくると思います。
特に編集制作会社は、出版社以上に媒体や分野に適したコンテンツの提供スタイルに精通しているわけですから、今後ますます役割は大きくなっていくと思いますし、大きくならなければ、市場も拡大できない。
その意味で、編集制作会社に寄せられる期待は、ますます大きなものになっていくと思います。

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