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エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役 土井 英司 ベストセラーを生む秘訣
土井 英司氏 エリエス・ブック・コンサルティング代表取締役 土井 英司 EIJI DOI
出版コンサルタント・書評家
1974年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒。編集プロダクション、出版社を経て、
00年Amazon.co.jp起ち上げに参画。数々のビジネス書をベストセラーにし、「アマゾンのカリスマバイヤー」と称される。
04年、有限会社エリエス・ブック・コンサルティングを設立。業界屈指の出版コンサルタントとして活躍するほか、読者数4万9,000人を誇る日刊書評メールマガジン「ビジネスブックマラソン」の編集長を務め、最も影響力のある書評家の一人として注目されている。

出版不況、若者の読書離れ、電子出版の台頭窶披€煤B今、出版業界は未曾有の苦境に立たされている、というのが業界の定説だ。だが、エリエス・ブック・コンサルティング代表の土井英司氏は「若者は決して読書離れなんかしていない。苦境だというのは、本気で読者を育てようとしていない出版業界自身の甘えだ」と言い放つ。会社設立以前はAmazon.co.jpのカリスマバイヤーとして名を馳せた土井氏は、現在、年間1000冊のビジネス書を読む書評家として、あるいは数多くの著者のブランディングを手がける辣腕出版プロデューサーとして注目されている。
出版文化を愛するが故にあえて業界に苦言を呈するという土井氏に、ベストセラーを生む秘訣、出版市場拡大のために業界が為すべきことを聞いた。

ビジネス書を読みふけっていた子供時代
土井さんはご著書に子供の頃からビジネス書に触れていたとありますが、そもそも、子供がビジネス書を読むというのが、なかなかイメージがわきにくいのですが、きっかけはなんだったのでしょうか。
僕にとって読書は、子供の頃から実践に生かすためのものなのです。実家が水道工事業を営んでいたので、その跡を継いで経営者になるという意識を小学生の時にすでに持っていました。だから小学生の頃、経営を勉強するために松下幸之助さんの本を読んだりしていました。学校の勉強も受験のための勉強というより、経営に役立つかどうかが、僕には大事だったので、高校生の時にはNHKラジオの「やさしいビジネス英語」を聞きながら、ビジネス書を読んでいて、ちょっと変わった子供だったかもしれません(笑)。
僕が子供の頃、一番夢中になって読んだ本は、昆虫図鑑です。昆虫は外に行けばみつけられますから、本の世界と現実の世界がつながっているということが実感できたし、それが学びたいという欲求も満たしてくれました。読書をすることで知識が身につく、それを最初に教えてくれたのが昆虫図鑑だったと思います。 最近でいえば、小学館の『NEO+ くらべる図鑑*1』が、それにあたる本だと思います。読者が生き物のサイズを比べながら実感できる工夫があるのです。例えば、東京のビル街に恐竜がいたらどのくらいの大きさなのか、クジラをほかの動物と比べたらどのくらいなのか、という仕掛けがあって、楽しみながら知識が身につくということで、子供にも大人にも人気があります。
そもそも、僕は人間にとって、読書というものは「世界を知る」ということだと思うんですね。福沢諭吉は『学問のすすめ』で「天の道理に基づき人の情に従い」と言いました。これを身につけるために勉強をする、読書をする。何かを知りたい、勉強したい、解決したいという視点で本を選ぶ読者は多いはずです。だから、本が売れない、活字を読まないと出版界は嘆いているだけではなく、読者の学びたい欲求に応える企画をつくり続けているかということも、問われているのだと思います。
世代のカルチャー、シンボルを理解する
なるほど。企画をするにあたって「読者の学びたい欲求に応える」というのは重要なポイントだと思います。しかし、それだけではなかなかヒットにつながらないと思うのですが、ヒット作を生み出すために必要なことはなんだとお考えですか?
企画というのは、そもそも「企てる」「画策する」という意味です。どんな企みなのか、誰をどうしたいのか、という「企み」がなければ売れません。
まずは「今の人たちは何を欲しているのか」ということを見極めることです。どんな悩みを解決したいと思っているのか、世の中の利害関係はどうなっているのかといった本質をつかむことが重要です。時代が変わっても、そんなに人間は変わりません。だから、我々は歴史に学ぶのだし、そうすると自ずと時代のテーマは見えてきます。テーマが見えて、人間の行動パターンが分かってくれば、次に何が流行るのかは、大体予想がつきます。
たとえば出版業界では不況になるとレシピ本が売れるというのは定説です。それはなぜかというと、外食を減らして自宅で食事をする人が増えるからです。 リーマンショック後、こうした傾向は顕著なのですが、企業戦士も残業が減って早く家に帰るようになると、家族との団らんを楽しむようになります。そうすると、子供がいる人ならば一緒に読める児童書を買って帰る、という行動が見えてくる。
そういう視点で、『もしドラ』がなぜ’萌え’なのかと考えると、その世代の人たちが、マネジメントの勉強をしたいと思うようになってきたから、というのが浮かび上がってきます。今の35歳は『少年ジャンプ』世代です。でも、35歳くらいになれば会社組織ではマネジャーに昇進する世代です。ということは、マンガ、アニメという彼らが消費してきたカルチャーがヒントになる。だから、その世代のカルチャーと、彼らが反応するシンボルの表現方法を巧みに取り入れたところが、読者の共感を呼んでベストセラーになったのだと思います。こうした世代の気分というものを的確に捉えていくセンスは、ヒット作を生むには非常に重要なポイントだと思います。


*1 NEO+ くらべる図鑑
2009年刊行。身近なものから宇宙の果てまで、いろいろなものを比べる今までにない図鑑。編集制作は当協会会員社の株式会社キャデック。

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