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第2の電子書籍になるか!? 「耳で聴く読書文化」を築く 株式会社オトバンク 代表取締役会長 上田 渉 氏

オーディオブックとは、音楽を聴くように本を朗読したものを録音した音声コンテンツだ。かつてはカセットテープやCDに録音されていたオーディオブックだが、ここ最近はインターネットから音声をダウンロードし、スマートフォンで音声を聴く読書スタイルによって、再注目されている。オーディオブックは電子書籍に次ぐ第2の柱となるのか!? オーディオブック配信の国内最大手、株式会社オトバンクの会長 上田 渉氏に伺った。


株式会社オトバンク 代表取締役会長
上田 渉 氏 Wataru Ueda

1980年神奈川県生まれ。東京大学経済学部経営科中退。緑内障で失明した祖父と少年時代を過ごした原体験から目の不自由な人を助ける事業を立ち上げたいと2004年にオーディオブック配信会社・オトバンクを創業。代表取締役社長に就任し、2012年3月より現職。国内最大のオーディオブック事業者としてオーディオブック配信サイト『FeBe』を運営。また、オーディオブックをダウンロードできるカード(通称「OTOCA」)を開発し、2015年8月に初のオーディオブックカード付き書籍『完訳 7つの習慣』の書店販売を実現させた。

日本とアメリカのオーディオブック市場の違い

——2015年4月にオーディオブック市場の普及を目的とした日本オーディオブック協議会が大手出版社16社によって設立されました。上田会長は常任理事を務めていらっしゃいますが、なぜ、このタイミングに設立したのでしょうか?

最も大きな理由は、各社とも電子書籍を作る環境整備が一段落ついたからです。というのは、2015年1月に改正著作権法が施行され、電子書籍権が設定されたことで、各出版社は電子書籍を作らなければならなくなりました。そのため、法律が施行されるまで電子書籍の準備に追われていたのです。そして法律が施行されたので「さあ、次に行こう!」ということになりました。

——第2の柱にオーディオブックが選ばれたのは、なぜでしょうか?

それは、2016年度より「障害者差別解消法」が施行され、健常者と障害者の差別なく情報のアクセシビリティの向上を行うことが業界として求められていたからです。また国際的にも視覚障害者の情報アクセスを保障する「マラケシュ条約」が成立したことで以前からオーディオブックは強力な候補に挙がっていたのです。
その上、アメリカではオーディオブック市場がすでに成長しており、国内でも弊社が市場を開拓し続けた実績から日本も素養があると証明されたので、業界を挙げて取り組むことになりました。

——現在、アメリカのオーディオブック市場の規模はどのくらいですか?

アメリカの市場規模は約1600億円以上あると言われています。オーディオブックの市場規模はどの国でも書籍市場全体の5~10%くらいにおさまるようにできており、日本でも潜在的な市場規模は500~800億円くらいあると予想されています。ですが、現状は50億円程度。しかも、その大半は音源をダウンロードするのではなくて、主に落語などのCDがメインです。

——アメリカでオーディオブックが生活に根付いているのは、なぜでしょうか?

アメリカは車通勤が主流なので、1970年代から車の助手席にカセットテープの束をドンと置いて、走りながらテープを入れ替えて聴く習慣がありました。1980年代の日本でも、アメリカでのオーディオブックブームを受けて約100社がオーディオブック文化を作ろうと参入しましたが、結果、流行りませんでした。

——それはどうしてですか?

日本の通勤環境は電車が主ですよね。当時の電車通勤ではウォークマンを使うのですが、ウォークマンは単価が高くて今のスマートフォンに比べたら重い。しかもカセットテープの1本は45分と60分のテープしかなくて、本一冊を収録したカセットテープは5本組になってしまいます。すると、値段もその分だけ高くなるので、文庫が300円の時代にわざわざ買うかというと買わないですよね?
こうした理由で日本では普及しませんでした。アメリカでは1970年から始まった市場が40年経った今でも続いていますが、日本では一回止まってしまった市場なので歴史が違うのです。

——アメリカの場合はすでに成熟市場に入っているのですね。

そうです。アメリカの場合は現状、電子書籍市場よりもオーディオブック市場のほうが大きい。それは電子書籍の歴史が浅いからです。国内のオーディオブック市場に再び光があたり始めたのは、弊社がサービスを開始した2007年くらいから。そして、スマートフォンの普及で、急速に市場が拡大しています。

オーディオブック市場を広げるための施策とは?

——日本のオーディオブック市場を広げるためには何が必要だと思いますか?

まずはオーディオブックを知らなければ使っていただけないので、オーディオブックに光があたることが大事だと思っています。たまにTwitterで「本の内容を耳で聴けたらいいのにな」とつぶやいている人がいて「ここにあるよ」ともどかしい気持ちになります。まだまだ認知度が低いのが現状です。

——その意味では、2015年7月にAmazon傘下のオーディオブック配信会社Audibleが日本に参入してニュースになりました。御社にとってはライバル社になると思いますが。

Audibleには弊社から2,000タイトル弱ほどのコンテンツを提供しています。かねてから他の配信業者が入ってくるのは良いことだと思っていたのでAudibleからの協力依頼には快く応じました。市場というのは、弊社単独で広げていくよりも複数社が切磋琢磨することで成立していくものですから。

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