Part1 今後ますます重要度が増す作り手としての営業
「営業と編集が連携していくために必要なこと」
1、入社当時に抱いた印象
~編集と営業の間は不協和音だらけ。正しい仕事ができていない
新卒で証券会社で飛び込みの営業をやりまして、その後パソコンソフトの流通会社で、これも飛び込みの営業をやり、その後1998年にダイヤモンド社に入社しました。その時、率直に思ったことですが、ふつうメーカーなら営業が中心の会社がほとんどで、そんな世界からきた人間には、編集と営業がなぜ話をしないのか、なぜお互いにしっかりとしたコミュニケーションを取ろうとしないのか不可解でした。編集と営業の間は不協和音だらけで、正しい仕事ができていなかったように思います。
★そもそも営業という仕事に興味がない(営業部門)
編集をやりたかったが営業に異動させられた、編集希望だったが残念ながら配属されなかったという方もいらしたり、営業で働く人のマインドは、「やらされ感」が満載でした。
★営業は何もやってくれない。(編集部門)
「うちにはよい営業マンがいないから売れないのだ」といった空気も流れていましたし、私自身も「営業業務は配本という作業なんだから、本の内容を知ってどうするの?」といった事を言われたこともあります。ダイヤモンド社は、雑誌の会社で「週刊ダイヤモンド」の販売と広告収入で成り立っていた会社です。書籍部門は、どちらかというとお荷物の部門。たまたま、中途採用された私としては、逆に、「ものすごいチャンスがあるな」と思いました。書籍のほうは、何もやっていなかったから、「営業がしっかり手をかければ、売上の拡大は間違いないな」と思ったわけです。
そして、2000年前後苦境に直面し、そこから経営改革が始まりました。
2、正しい仕事をするために
営業としては「正しい仕事」をしていきましょう、とさまざまな改革を行なっております。正しい仕事ってなんだろう、というと、まず、
- ★営業が責任を持って、売る仕組みを作ろう。
- ★自信を持って営業できる仕組みを作ろう。
- ★書店の皆さんに信頼される仕組みを作ろう。
- ★コンテンツあってのメーカーだから、編集者から信頼される仕組みを作ろう。
- ★著者から信頼される仕組みを作ろう。
ということを掲げて、改革をしています。
3、発行点数主義からの脱却(営業)
~1冊1冊を長く売り続ける
- ★「新刊」という言葉に捉われない
- ビジネス書に新刊、既刊という区別は意味がないのです。
- ★「数字」の根拠をしっかり持つ
- あてずっぽうはやめましょう。仲がいいから展開してもらおう、というのはやめよう。
- ★売り伸ばすチャンスを逃さない。いつでも売れる機会はある。
- ★1万部は3万部に! 3万部は5万部に! 5万部は10万部に! 10万部は20万部に!
- 可能性は絶対あります。
- ★売上が足りないから年度末にフェアセットを投入する、売上が足りないから月末にあと3点出そう、こんな恥ずかしいことはやめましょう。
- こう言ったことを言い続けてきました。編集も同じです。
4、発行点数主義からの脱却(編集)
~1冊1冊を手をかけてじっくり作る
- ★目標は「発行点数」ではなく「売上金額」。
- 売上げ1億円お願いね、みたいに。じっくり作れば10万部の本ができるかもしれません。
- ★納得いくまで出さない。
- 表紙に納得がいかなかったら、タイトルに納得がいかなかったら、目次に迷いがあったら、刊行を遅らせることもあります。
- ★書籍の奥付には担当編集者名を入れる。
- 自分が自信を持って世に出しているのだから、編集者の名前を必ず入れましょう。
- ★新刊案内には担当編集者名を入れる。
- 営業担当する新刊案内に、担当編集者の名前を入れます。著者さんの人気ってすごいです。ビジネス書なら堀江貴文さんだから買う、という読者がいる。編集者も同じような存在になるといいなと思います。○○さんが作った本だから、と言って買ってくださるお客さんをたくさん作れたら、、、編集者をブランド化することが目標です。
たくさん本を出す著者がいますが、同じ著者でも、売れている本、売れてない本と分かれます。それは、編集者の力量の違いがあると思うのです。編集者三十数名いるのですが、よく集まってもらっています。著者がブランドなら編集者もある、と。編集者には「いえいえ、黒衣(くろご)ですから」という意見もありましたが、今は、責任を持って名前を出す、とダイヤモンド社では、行なっています。
5、商品を理解してから営業促進を
~企画検討&企画調整会議の開催
- ★毎週1回、2時間、企画検討会議をやります。
- 会社から発行するかしないか可能性を探る会。その時、企画を持っている編集者が一同に会して、検討します。
- ★出席メンバーは、営業と編集の全メンバー。
- 宣伝プロモーション、取次営業、書店営業、売りに関わる全員とその時企画を温めている全編集者が一堂に会します。
- ★企画に対してさまざまな議論をする場
- 企画趣旨、内容、タイトル、価格、部数を検討します。
- ★会議の主催者は、営業局側にあります。形の上では決定するのは、私になっています。
そうすると、営業がその場でつぶすのか、と質問されますが、基本的には、編集者の感性や思いを重要視するので、その場で「本を出すの、やめましょう」と言ったことはありません。基本的には編集者の思いを営業が受け取って、どう売っていこうかという場になります。
会議を始めたのは、当時、ほとんど新刊の中身をわからないで、書店さんに営業活動に出ていたからです。新刊一覧表しかなくて、本の特徴が少し書いてあるだけでした。これですと書店さんに、この本はこういう本で、こういうターゲットに、こう売っていきたい、と説明できないですよね。
著者の思い、編集者がどんな思いでこの本を作ったのか、すべての営業がまず知る、ということから、この会議を設けました。営業メンバーの仕事の1つとして、こういったことがわからないまま、営業に出ないでください、と言い続けています。
6、1冊1冊を長く売るために①
~売上げデータ分析システムの開発
当時は、データとか、POSデータとか、そもそも出版全体でデータを収集する仕組みはなかった。数年たって、ダイヤモンド・コンピュータ・サービスさんとか、インテージさんとか、システム会社がPOSデータ収集の仕組みを整備されました。ダイヤモンド社も10年ほど前からインテージさんとタッグを組み、営業が使いやすい売上データ分析システムを作ってきました。このシステムを開発した理由は、
- ★数字という根拠を持って営業活動をする。
- ★日次、週次、月次で全営業メンバーが同じレベルで進捗状況を共有する。
- ★過去の数字、編集者にとらわれない。
- うちでは初めての著者だから、とか以前書いたものが売れなかったから、とか、個別の編集者と仲がいいから、とか、そういうことに絶対とらわれない、という意味でも、この数字を見る、ということが、すごく大事なことになってきます。
- ★共有方法は、営業会議での読み合わせ。
- 「どこどこの書店さんでこれ売れているね」とか、「これ、広島で何か仕かけをしているの」とか、そうしたことを、だいたい20~30商品位なんですが、それを読み合わせることで、それぞれの商品の動きを、営業全体で共有する。
- ★数字をもとに結果検証をする
- 毎週、いろんな数字が出ますので、その数字を検証して、何がよくて、何が悪かったのかということを、全員で検証しています。
7、1冊1冊を長く売るために②
~宣伝プロモーションとの連携
3年前に、宣伝プロモーション部を立ち上げました。宣伝部はありましたが、新聞に広告を出すことが中心でした。営業チームは20年前から様々な改革をして、10年位たって書店さんとの信頼関係ができ、こちらのおすすめする本の展開が可能になってきました。
もう1つブレークさせるものは、何なのかな、と思った時、やはり、読者に直接語りかけて、書店さんに足を運んでもらわなければならない、そのためには、書店さんへの営業も大事だけど、同時に読者に声をかけなければならない、と考えた結果、プロモーションの大切さに思い当たったのです。私にはそのような能力はないので、プロ―モーションのスペシャリストをスカウトし、3年前に宣伝プロモーション部として部署化。いま5人のチームで活動しています。営業局内にあります。
- ★プロモーションの狙いは何か。
- そもそもその商品その商品、どんなターゲットを狙っているのか、そのターゲットには、この書籍の中のどんなキーワードが有効か、心に響くのか、また、
- ★いつどんな広告を出すのか?
- ★いつどんなパブリシティーが出るのか?
- ★店頭の在庫状況はどうなっているか?
- 昔は営業はだれも、どの商品が、いつ、どの新聞に半五段で、全五段で出るのか、分からなくて営業していた。広告が出た時に店頭に在庫がない、という状態。だから営業局の中に宣伝プロモーション部を置き、すべて理解した上で、営業活動をする、という形にしました。
- ★営業会議や日々の小ミーティングで共有する。
- この宣伝プロモーション部と書店の営業チームが中心になり、2チームは席が隣り合っているので、つねに情報を共有することで、テレビに取り上げられたり、新聞広告を出したりする時、店頭の在庫がない、ということが解消されました。
8、書店員に信頼されるために①
~書店への各種案内を仕組み化
- ★信頼される提案・情報の仕組み化
- ★提案を実施して終わらせず、結果の検証と共有を行なう
- それぞれの書店さま、それぞれの法人の本部さま、役職の方などと、しっかり検証します。当時は、書籍のフェアを行なって、お願いする時は一生懸命ですが、終わったら、それきりでした。提案を提案で終わらせず、結果の検証と共有を行なっています。
- ★一時の売り上げが目的の無理な提案、押し込み営業はいっさいしません。
- ★書店からの受注イコール売上げではない、
- このひとことに集約されます。実売はどうなのか、その実売を予測した上での提案をしていかなければならない。そうしたことでこの20年間、話し合いを続けています。
9、書店員に信頼されるために②
~書店員さん向け勉強会の開催
3年前から始めています。書店営業部の部長が中心となって全国を津々浦々まわり、いろんな書店員の皆さんに集まってもらって勉強会を開いています。
- ★昨年は48法人、全国75か所で勉強会開催。
- 「単なる商品紹介ではなく、様々な売り伸ばしのケーススタディをもとに、ビジネス書はこうすればまだまだ売り上げが伸びますよ」などと提案します。書店員さんの数でいうと、のべ2000人くらいですね。通常20~30人位、ツタヤさんでは地域によっては100人位参加していただいております。
- ★本作りにかける思い、販促にかける思いを理解していただく。
- 勉強会に編集者にも同行していただき、本作りにかける思いとか、営業からは販促にかける思いなどを語って、理解していただく場になっています。
- ★データをもとに、「まだまだ本は売れる」ことを実感していただく。
- 雑誌・コミックの販売は厳しい状況が続き、今後のカギになるのが書籍売上です。勉強会では様々なデータを見ていただきながら、「このデータをみてください。まだまだ本は売れるということが分りますよね」と、実感していただく。
- ★正しい姿勢をしっかり伝えることで、より強い信頼を獲得。
- ダイヤモンド社の営業姿勢を理解していただけるのであれば、一緒に頑張っていきましょう、と伝えます。
そう言った勉強会を2時間くらいやって、そのあと、懇親会を開催します。費用はものすごくかかりますが、何とか捻出して、この活動を続けています。
10、編集者と円滑なコミュニケーションを生むために
~本音で意見交換できる場づくり
ダイヤモンド社は編集と営業がすごく仲がよいのですが、常に気にかけているのは、水曜日の会議だけでなく、本音で意見交換できているか、ということ。
- ★各種の売上げデータを全編集者と共有する。
- 各種の売上データは営業だけでなく、全編集者とも共有しています。担当編集者から、「これは在庫が切れているのでは?」とか、「これは駅の中のお店で仕かけたら売れるのでは?」といった指摘をもらえることもあり、そこから販促がスタートし、さらなる売上増のきっかけになることも少なくありません。パブライン、日販トリプルウィンは編集者が直接見られることはもちろん、インテージデータなども全編集メンバーと共有しています。
- ★営業フロア内にゲラボックスを設置
- 企画の内容は、会議でかなり把握できますが、実際はどうなのか、読むまではわからない。であれば、ゲラが出来上がった段階で、「ゲラボックス」にどんどん入れていってもらうことにしました。手分けして読んで、感想をいう。「これ面白いから、戦略商品にしよう」とか、つねにそういったことをやっています。
- ★営業主催の5万部達成お祝い会
- 新刊、既刊を問わず、5万部を達成した編集者を営業が労う会。最近、この3年で基準を変えました。2400円、2800円といったビジネス書はなかなか5万部に到達しません。では、5万部金額で換算したら、ということで、ある一定の金額で、そこを越えたら同じようにお祝いします。「平均定価1500円で換算したら5万部ですね」と。それから、高単価の専門書も一緒にお祝いする会になっています。
- ★編集者とのランチ会
- これは公式ではないのですが、各編集部ごとのランチ会を月に1~2回やっています。
仕事の話から、個人の趣味の話まで、ざっくばらんな話をしています。今は、自然に誘い合いながらのランチ会を開催しています。
- ★書店員向け勉強会への参加
- 重複しますが、書店員向け勉強会には、編集者にも参加していただいています。特に東京地区でやるときは、本社ビルの一番上に会議室があって、そこで100人位は入れるので、その時いる編集者には、極力参加してもらいます。とくに、懇親会で、自分の作った本を持って、書店員さんと交流していただくという機会を作っています。
11、著者からの信頼を獲得するために
~営業チームのファンになっていただく
著者の先生と編集者がトラブってしまうことはよくあると思います。たいていの原因は、「何で紀伊國屋新宿店の1F新刊コーナーに本が置かれないのか?」「なぜ、アマゾンに在庫がないのか?」、といったことです。
- ★著者からのミーティング依頼には積極的に営業が同席する。
- ★著者が伝えたいことをより深く理解する。
- ★できること、できないことを営業目線で、しっかり説明する。
- 著者さんのほうでは、すべての本屋さんで、かならず自分の本が置かれるんじゃないか、と思っている方が多い。編集者だけだと、やはり、なかなか明確なお応えができないことが多いと思うので、そこで営業がいる役割があります。出版業界の中で、できること、できないことを営業目線でしっかり著者さんと話し合いをします。
- ★編集者任せにしない
- いちばん読者に近いのは、書店さんであり、そこに紹介するのが営業なので、著者からの依頼は、積極的に参加しましょう。編集者任せにしないでくださいね、と言っています。
ひとことでいうと「営業チームのファンになっていただきたい」。ダイヤモンドの営業チームなら売ってくれる、という信頼関係、それを目指してやっています。
12、1冊1冊を長く売るための組織作り
- ★メンバー全員がマーケテイング志向を持つ。
- ★紙とデジタルを分けない。
- いまは電子書籍の安売りには反対の立場です。紙で1500円で売っている本は、電子書籍でも1500円で売れる。安くしなくてもいい。電子書籍の部署が営業と別の所にあり、情報が共有できない中、勝手に50パーセントキャンペーンをやってる、といった話が起きている出版社もあると思いますが、今はこれを避けたく、営業局の中にデジタル推進室を置いています。
- ★メンバーが存分に動ける環境を用意する。
- 営業局の中には、宣伝プロモーションしかり、デジタル推進しかり、そして、書店さんからの受注がいちばん多いコールセンターを同じフロアに置いています。これは、書店さんの声をつかめて、何かトラブルがあった時、誰かしら営業がいるので、対応ができます。
- ★主要ポストには、能力ある人材、やる気のある人材を登用する。
- 当たり前ですが、男女、年齢関係なく、やる気のある人材の登用が大切です。
13、まとめ
~正しいことは何かを徹底的に追求
正しい仕事とは何かを徹底的に追求してきました。これからも続きます。
- ★「読者」に目線を置くこと
- これが何よりも大事だと思います。業界のいろんな慣習がありますが、読者には関係ない。読者がどう思うか、をつねに考えましょう。そして、
- ★「皆で作って皆で売る」という意識を持つ。
- 編集は作るだけ、営業は売るだけ、ではなくて、お互いに理解しあう。
- ★お互いの視点の違いを理解する。
- 視点が違って当たり前。「編集者は自分が作った本が大事でかわいいのは当たり前で、その気持ちは理解しないといけないよ」と営業に言います。編集は編集で「営業が13人で書店を回っているのだから、完璧に見られるわけがないでしょう」と、編集局長が、そう言ってくれていると思う。だからうまくいっているのだと思います。
- ★危機を、変わる最大のチャンスととらえる
- 20年前がそうだったのですが、「危機は最大のチャンス」です。いま、出版業界、最大の危機になっていますから、ダイヤモンド社はチャンスだよね、と毎日、言っています。
Part2 「出版業界の現状とこれから」
忘れられた既刊の売り伸ばし方
出版業界全体の話の前に、少し、既刊本の売り伸ばしの話をお伝えしたいと思います。
書店さんは、どうしても「新刊がほしい、新刊が入らないと売れない」と言います。しかし、文芸書は別ですが、ビジネス書は新刊・既刊という区別はあまり意味がないのです。
既刊本の販売について「ダイヤモンド社ベスト50冊」を掲げますと、ベスト50のうち15冊が新刊で、既刊は35冊、ベスト50冊が、3000アイテムある中で、64%稼いでいる。だから、ちゃんとケアをしていかなければならない。書店さんが、出版社が、諦めなければ、既刊本はずっと売れ続けます。売り伸ばすことが可能です。
事例として、「伝え方が9割」は2013年に出て、今でも売れ続けている。2年後に第2弾が出る時、仕掛けをして大展開して、4年後に第3弾が出る時も、必ず先に出たものを売り伸ばす、徹底して併売することを行ないました。
「入社1年目の教科書」は、毎年、決まった時期に展開して売れています。2011年5月に出ましたが、年ごとに売れ方が増えている。指導する先輩が5冊まとめ買いなどしているそうです。
「伝え方」とか「雑談力」とか「話し方」など、基本書は、いつの時代も読まれる、ということがわかって、自分たちの自信にもつながりました。
新刊は、“本の力”で売れますが、忘れられた既刊を、どう売り伸ばすかが大切です。
また、ダイヤモンド社は、重版率50%を超えています。出すもの全点重版になるのは理想的ですが、そうもいきません。チャレンジ企画の書籍も、編集者や著者にとって必要ですね。ただ、50%に満足しないで、上げていきましょう、と言っています。
出版業界全体の状況
1999年と2017年の、書店数、書籍売上げ、新刊発行点数、返品率を比較したもので、業界全体の推移を見ます。わかりやすく1996年と2016年の20年間を比較します。
- ★「販売金額」が書籍は1996を100として、2017年は65%、雑誌は42%、全体で52%です。つまり、業界売上げは、2兆6千億円から1兆3700億円に減っています。雑誌の売上げが急減しているんですね。半減どころではないです。雑誌が本当に厳しい。私も雑誌をどうするかで頭がいっぱいです。
- ★「返品率」は1996年書籍36・1。2017年36・7で高止まり。雑誌は36・1から43・7で、20%台から40%台に急上昇です。返品率は目も当てられない。原因は、無駄な増刊とムックで、それが全部返ってきています。
- ★「書店数」をみると、1996年に24,000店舗あったのが、2016年に12,526店。20年間で半分が廃業・閉店になりました。ところが、
- ★「新刊点数」は、1996年書籍が6万3000点、2017年は7万3000点です。一時8万点を超える年もありましたので、直近5年ぐらいは減っていますが、業界売上が最高値であった2016年と比べると増えています。とくに、月末、年度末は急増します。現在は、高速の自転車操業状態といえるでしょう。
- ★「取次会社」1998年、13社あったものが、2017年、ほぼ5社になりました。業界の流通と、お金回りを圧倒的な力で支えてきた取次会社の破たんが続出しました。
苦境の原因
原因となっていることを探ってみました。
- ★雑誌・コミック売上げの落ち込み
- ★物流の危機
- 日経新聞でも話題になっていますが、雑誌・コミックをいかに発売日に届けるか、そのための物流ができていました。もともと雑誌をもっている出版社は、雑誌運賃協力費を支払って、バックアップして運んでいた。それが限界を迎えているということだと思います。いま、各取次会社が、それぞれの出版社に運賃の協力を、とすでに始まっている。個別の出版社の判断なので、何とも言えませんが、運賃を協力していくのか、いかないのか、今年の大きなテーマになっている。
- ★供給過多
- 出版点数が多すぎる。供給過多になっているんです。書店さんも疲弊しています。正社員もどんどんやめてしまっていて、パート・アルバイトの比率が上がっています。
- ★混乱する書店現場
- そんな中で、書籍を送り込まれているという実態もあり、全てをしっかり置けるはずがないんですね。書店さんの現場は混乱を極めているのが現状です。
これから起こること ~追い込まれる出版社
「これから起こること」これは、本当の意味で出版社が追い込まれるということだと思います。今売れている出版社であろうが、なかろうが、追い込まれる。先ほど言ったように、いま書店数が1万2,000店。20年前の半分です。すべてが半分になっているのに、半分になっていないのが、出版点数と、出版社の数。
今までお金は回っていました。取次さんが受けてくれて、配本ができればある程度、お金が回っていました。でも、さっきの話ではないですが、それを受ける取次会社さんが、いま非常に厳しいんです。
トラック業界の皆様ともいろいろ話しているのですが、ドライバーさんが足りない。東京都の書籍運搬にかかわる年齢は、平均年齢56歳です。この先が心配です。
今までは、3000部作ったので、なんとか配本をお願いします、とやっていたのが、これからは、出版社が追い込まれる番です。本当に私自身、業界の問題に向き合えば向き合うほど、現実がわかってしまうので、襟を正して、ダイヤモンド社もちゃんとやっていかないとならない、と毎日感じています。これから起こることって、何が起こるかわからない。ただ1つ言えることは、出版社が本当に追い込まれる、ということです。(了)
(平成30年2月22日(木)AJEC編集講座での講演より)