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ライター 上阪 徹氏 プロフェッショナルの仕事 窶披€鐀 読者に幸福になってもらうために
上阪 徹

1966年、兵庫県生まれ。89年、早稲田大学商学部卒。アパレルメーカーのワールドで営業、リクルートグループで広告制作を経て、95年よりフリー。経営、金融、ベンチャー、就職などをテーマに雑誌や書籍などで精力的にインタビューや執筆を手がける。インタビュー集に『プロ論。』シリーズ、『外資系トップの仕事力』『我らクレイジー☆エンジニア主義』。著書に『新しい成功のかたち 楽天物語』『600万人の女性に支持される「クックパッド」というビジネス』『「カタリバ」という授業』『預けたお金が問題だった。マネックス松本大が変えたかったこと』などがある。


40万部の売れ行きを見せたインタビュー集『プロ論。』。そのライターを務めた上阪徹氏は延べ3000人以上の著名人インタビューを雑誌や書籍で行っているトップライターである。その氏が昨年末、自らの取材術、文章術を明かした『書いて生きていく プロ文章論』を上梓した。「編集者は読者に利益を提供するためのパートナー」という氏に、プロフェッショナルの仕事について聞いた。

それは「誰のための仕事なのか?」

上阪さんは会社員時代はリクルートグループで求人広告の制作をされて、その後転職したら会社が倒産。なし崩し的にフリーの道を歩むことになったとおっしゃっていますが、今、ライターとして高い評価を受けている理由はなんだと思いますか?

目の前の仕事に真剣に向き合ってきた。それだけだと思っています。結局、誰のための仕事か、だと思うんです。会社員時代は、クリエイターとしていい作品を残したい、社内コンクールで表彰されたい、という思いが大きなモチベーションになっていました。でも、フリーランスになったらそれは全くなくなって、いかに広告主やディレクター・編集者に信頼してもらえるか。それをまず考えるようになりました。もっといえば、僕のアウトプットした原稿を支持してくれるのは、読者だったり、広告をみる消費者だったりするわけですね。その支持こそが、編集者や広告主の信頼につながる。つまり、直接仕事をしている人の、向こう側を意識して仕事をすることが何より大事だということです。

今でも、仕事がなくなる不安を常に持っています。依頼された仕事に対して、期待を超えるアウトプットができるかどうか。それをいつも考えています。

会社員のときとは、仕事への意識が変わったということですか?

フリーになったばかりの時は食べていくのに必死でした。「どうすればお金が稼げるんだ?」を突き詰めていったら、「誰のための仕事なのか?」「誰にお金をもらってるんだっけ?」を第一に考え始めるようになったんです。仕事をくれる人は発注者かもしれないけど、その向こうにいるのは読者だったり、広告主だったりするわけですよね。

会社を辞めて一番思ったのは、会社員の時は甘ったれていたなぁ、と。やれ上司が悪い、会社が悪いって言いがちじゃないですか、サラリーマンって。でも辞めたら全部自分の責任なんですよ。だから、辞めてスッキリしたんですよね。「全部オレの責任だ」と。仕事が来ないのも、失敗するのも全部自分の責任なんですから。

ライターのイメージを覆したい

あとは、もし僕が評価いただけたのだとしたら、今まで絶対に締め切りに遅れることがなかったことだと思います。この業界は、いわゆるビジネスパーソンとしての意識をもって仕事をしている人が少ないと感じていました。

僕はリクルートの前、新卒でアパレルメーカーに就職して、失敗したと思いながら、1年間キツイ営業をしていたんですけど、今考えると、あの時の経験は貴重だったと思います。お客さんに接するときの言葉づかいとか、お客さんの会社に入る前はコートを脱げとか。ビジネスの基本中の基本みたいなものをたくさん教わりました。それに比べれば、この業界は本当にルーズでした。締め切り守らなくて、平気な顔をしていられるとか、お客さんのところに行くのにジャケットを着ていかないとか、「オレはフリーランスだ、サラリーマンじゃないんだ」と考える人もいるようですが、そういうプライドは私には意味がわかりません。

お金をいただいている以上、いい原稿を書くだけじゃなくて、ビジネスパーソンとしての意識が必要だと僕は考えています。できることなら「ライター」という職業のユルいイメージを覆したい。『プロ文章論』のなかでも書いたんですが、インターネットの登場などで文章をめぐる環境が大きく変わる中、ライターという職業の社会的地位をもっと向上させられないかと考えているんです。

なるほど。それはフリーランスに限らず、業界全体でそういう意識が必要なのかもしれませんね。では、同じ業界のなかで仕事をされている、上阪さんには、今の編集制作会社はどう映っていますか?

よく「会社にしないんですか?」と聞かれるんですが、僕はマネジメントが向いていないので(苦笑)。でも、経営って本当に大変だと思います。毎月、お給料払わなくちゃいけないことは、人件費だけでも相当なプレッシャーです。理想論だけではメシは食ってはいけないというのがホンネのところだと思います。

でも、そこで出版社や取引先の下請けという感覚なのか、パートナーという感覚で仕事をするかで、社員も会社も成長できるかどうかの分かれ目になるのではないかと思います。

お金は確かに出版社からもらうんですが、じゃあ、その出版社からのお金はどこから出てくるんだっけ? という意識を常に持たないといけないと思うんです。読者であったり、広告を出稿しているクライアントがあってこそ、媒体も、自分の仕事も成立しているわけですから。

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